止まった時間”が、後からキャリアになった
一時的な離職・休職等によるキャリアの中断を肯定する
欧州発祥の「キャリアブレイク」という考え方。
留学やスキルアップなどの学び直し、
ライフイベント、旅や休息など。
理由は違っても、
定職から離れていた時間に、誰しもが一度は、
「この時間は無駄になるのでは」と
不安になる事もあります。
でも──
その時間が、後から新しいキャリアになる人もいます。
日本では、今もなお、定職から離れた期間は
「ブランク」と一括りにされがちです。
けれど本当にそうでしょうか。
キャリア=人生の轍という意味だと考えると、
それらは単なる空白の期間ではなく、
キャリアの“文脈が変わった時間” ではないでしょうか。
留学後、思いがけない家族事情がきっかけで、
キャリアブレイクを経験した山木(仮名)さんも、
そんな一人です。
「キャリアを止めた」のではなく、
人生の途中で立ち止まり、自分を見つめなおすことで、
新たな人生の転機となった『キャリアブレイク』。
このシリーズでは、
彼らの“キャリアブレイク経験”をお伝えします。
1: 海外留学から戻り、立ち止まった時間
大学を卒業後、2年の会社勤めを経て、
アメリカの大学へ編入。
でも留学先は、日本人どころか、
アジア人もほとんどいない田舎街。
帰国子女でもない山木さんは、
日々の授業についていくのも必死だったそうです。
それでもホストファミリーや周囲の支えもあり、
なんとか無事に卒業。
海外生活を終えて、次は日本で就職を目指す_。
でも、帰国後すぐには、
仕事に就くことはできませんでした。
理由は、日本に戻ってきた直後に直面した、
祖母の介護でした。
「周囲が次々と社会人として進んでいく中、
自分だけは止まっているー。」
当時は、「キャリアブレイク」という言葉も知らず、
キャリアが止まってしまった感覚だけが強く残っていた・・。
2:介護という選択と、説明しづらい空白
帰国間際に求人情報を見て、
気になった会社がいくつかあったと話す彼女。
でも介護の日々が始まり、時間が過ぎていく中、
焦りばかりが募っていきました。
「介護で休んでいることは、
留学や資格取得のように
前向きに語れる経験ではないのでは・・。
転職や就職の場で、どう見られるのか、
うまく説明できる自信がない。
“都合のいい言い訳”としか、
受け取られないのでは」と。
そう考えるたびに、
この時間が“空白”として積み重なっていくようで、
不安ばかり増す日々だったと振り返ります。

3:毎日を回すことで精一杯だった時間
介護のサポートを始めた頃は、
すべてをきちんとやろうとしていた。
あのキャリアブレイク期間中は、
何かを成し遂げることより、
毎日を無事に終えること、
ただ、それだけで精一杯でした。
けれど、気づいたのは、
「完璧にやろうとすると、
自分が先に壊れる」ということだったー」。
それからは、毎日やることを三つだけ決め、
それ以外はできなくても責めないようにした。
自分がストレスで潰れないよう、
意識的にリフレッシュ時間も取っていました。
スキルアップや、自己研鑽とはほど遠い時間でしたが、
ただ、「自分を守るために休む」という感覚を、
この時、初めて知ったと言います。

4:一番大きかった再就職への不安
幸い周りの支えや施設のサポートもあり、
介護状況も落ち着いた山木さんは、
約8か月後、転職活動を始めました。
でも一番の不安はー、
「再就職できるかどうかだった」と振り返ります。
キャリアに一貫性がないと思われないか。
キャリアブレイク中に何をしてきたのか、
どう説明すればいいのかー。
休んでいた期間が、
「空白」として切り捨てられないだろうか_。
答えは簡単には見つからなかったです。
でも、ひたすらメモ帳に、自分がどうしたいのか、
何が得意だと言えるのか、何ができるのか、
思いつくままに書き留め、自分に問いかけ続けました。
5:キャリアブレイクは、ブランクだったのか?
キャリアブレイク開始から1年後、
求人サイトを通じ、旅行業界に就職。
海外で培われたコミュニケーション力と
語学力に期待をしてくれたそうです。
あれから10年経て、当時を振り返る彼女は、
あの時間が、ブランクだったと感じたことは一度もない
と落ち着いた表情で話してくれました。
「介護の経験は、直接的なスキルアップに
なったわけではないかもしれない。
でも、人と向き合う姿勢や、相手の状況を想像する力は、
確実にその時間で培われたのではと感じます。
あの時間は私のキャリアが止まっていたのではなく、
形を変えて積み重なってきたんだと・・。」

6:仕事に戻って気づいた変化
最後に、仕事に戻って気づいたこと、として、
こんなふうに語ってくれました。
「もし今、立ち止まることに不安を感じている人がいるなら、
その時間に無理に意味を与えなくてもいいと思う。
説明しづらい時間でも、すぐに言葉にならなくても、
あとから必ず自分の一部になる。
少なくとも、私にとってはそうだった。」
7:まとめ
思いがけない事情などがきっかけで、
仕事を休んでいた期間は空白ではなく、
それは「ライフキャリア」の一部。
人生100年時代の今、
途中で立ち止まったり、歩んできた道を
振り返ったりする時間は無駄ではなく、
そこで得た経験が、のちの人生や仕事に生きる。
キャリアの“文脈が変わる時間”となり、
次の一歩を踏み出す力に変わるのかもしれません。


コメント